★バックナンバー：5/26付け〜覆面調査によって暴かれる企業の動物虐待
2007年6月2日付けのメールより
Dear Friend、
ケイト・チューリントンは、PETAの覆面調査の責任者であり、動物たちを助けるために行われている覆面調査の実態を誰よりもよく説明してくれる人です。ケイトは責任者の任に就くまでは、自身も覆面調査をしていました。
PETAのサポーターの皆様、私たちの仕事を実現する手助けをしてくれる皆様に向けて、秘密裏に行われることの多い重要な覆面調査の仕事についてご紹介しましょう。つい最近、大きな変革をもたらした覆面調査の中心人物のひとりと「会う」チャンスも提供したいと思います。先週行ったばかりの、ケイトとのインタビューの抜粋を掲載します。
ケイト、そしてPETAの全スタッフも承知していることですが、あなたのサポートなしでも何一つ成し遂げることはできませんでした。
心の底から感謝を込めて。
すべての動物たちのために、
Ingrid E. Newkirk
PETA会長
◎覆面調査の責任者、ケイトのインタビュー◎
質問：PETAでは単に動物擁護運動や啓蒙活動をするのではなく、覆面調査を行っているわけですが、覆面調査はなぜそんなに重要なのでしょうか？
ケイト・チューリントン（KT）：覆面調査員は、動物擁護運動における最も重要な役割のひとつを果たしています。ポール・マッカートニーは「屠殺場の壁がガラス張りだったら、誰もが菜食主義者になるだろう」と言っていますが、むごい動物実験で利益を得ている企業は、厳重に施錠された扉の向こうで事を行っています。ですから、動物擁護団体は閉じられた扉の向こうに入り込んで、誰にも知られていない動物たちの生と死を記録しなければなりません。
私たちは、この画期的な覆面調査によって集められた証拠があってこそ、食品、毛皮、実験、娯楽などに使われる動物たちの悲惨な日常を、テレビ画面の「ガラスのブラウン管」やWebサイトの動画配信を通して白日のもとにさらけ出すことができます。写真とビデオは嘘をつきません。覆面調査により、動物虐待を示す最も説得力のある証拠が提示され、動物の権利を擁護する必要性を説くことができるわけです。
質問：あなたが覆面調査員になろうと思ったきっかけは何ですか？
KT：大学生だったある夏、私はPETAでインターンとして働いたことがあります。その経験をもとに、卒業したらフルタイムでこの活動をしたいと思いました。2001年に出席した動物の権利擁護会議でマット・ロッセルの覆面調査の体験談を聞いて、覆面調査員になれる可能性にもすぐに惹かれました――白状すると、こうした活動がまるで映画のように格好よくてスリルに満ちていると誤解していたのです！
私はすぐにPETAで働き始め、新しいボスの指導下でノースカロライナ州にあるいくつかの研究所に対して求職活動を行いました（もぐりこむ先は、ノースカロライナ州のUSDA認定研究所のリストで探しました）。そして、ノースカロライナ大学（UNC）に足を踏み入れることになり、普通の就職希望者と同じように（ただし、PETAの職員であることは黙って）面接を受けて、実験動物技師として採用されました。私はラットの担当になり、餌と水、ケージの掃除などといった飼育管理を行い、病気の徴候がないかどうかを観察して、問題があれば獣医師スタッフに報告していました。
質問：動物を苦しめる職場で働くのは精神的にきつくありませんでしたか？ 動物を救うために正体を明かしそうになったことは？
KT：ほとんどの人が想像するのとは逆に、覆面調査員は鋭敏で思いやりがあって共感能力が高くなくてはならないし、そのような資質を抑え込んでもいけません。初めて調査員として雇われたとき、私は覆面調査中に目撃することになる恐ろしい場面に動じないようにするにはどうしたらいいのかボスにアドバイスを求めたことがあります。そのような所で働くには、感情を麻痺させて動物たちの苦しみに何も感じないようにするしかないのではと思っていました。
ボスは、覆面調査員が、職場で毎日見なければならない動物たちの苦しみに無感覚になったらそれこそお終いだと言いました。だって、動物を利用して苦痛を与えている企業に潜入するときに、動物たちが強いられている日常に無感覚であっては、動物を苦しめて何とも思わない従業員と同じになってしまいますから。
担当している動物たちが苦しまないように介入したいのは山々ですが、私たちの目的は、覆面調査なしでは暴かれることのない動物たちの惨状を記録することにあるのだということを肝に銘じなければなりません。一人の調査員が抗議や積極的な介入を行っても、動物たちの助けにはなりません。その調査員は解雇され、閉じられた扉の向こうの動物たちの生死を記録できなくなってしまいます。
しかし、覆面調査の記録があれば、動物たちが強いられているショッキングな現実が世に公表され、動物擁護キャンペーンが誕生し、大多数の動物たちの境遇に変化をもたらすことが可能になります。
質問：覆面調査を行っている時に正体がばれそうになったことはありませんか？ そのときどうしましたか？
KT：ラットが固定装置で固定されている様子（アルコールの実験で、脳に液体を注入するため）をカメラにおさめている時に、実験技師が入ってきたことがあります。私はパニックになり、絶対に捕まると思いました！
でも、どういうわけか、彼は私のことを疑わしそうに見ただけで何も言わず、騒ぎにはなりませんでした。ちょうど部屋に入ってきた時に下を見ていて、自分が何を目撃したのか確信を持てなかったのでしょう。そうとしか考えられません。彼は、私がカメラをすばやくポケットにねじ込むのを見たはずだし、実験台からぱっと離れて歩み去った時に私の顔が真っ赤になっていたのにも気づいたはずなのです。
しかし、彼は私を詰問できるだけの確信が十分に持てなかったのに違いありません。もちろん、調査内容がWebサイトに公表され、固定装置で固定されたラットの写真が掲載されたときには、「そうだったのか」と思ったことでしょうね！
質問：覆面調査をしていた時には、友人や家族には何と話していましたか？ PETAの外部の人間に正体が知られることはなかったのですか？
KT：家族や友人などには、ただUNCで働いているとだけ伝えました。たいていは、それで十分でしたが、UNCで何をしているのかと聞かれたときには、キャンパスの事務所で働いていると答えていました。
私は、自分が動物実験賛成派で、研究所で実験を手伝っても平気な人間だとは思われたくなかったので、実際には何をしているのかについては口をつぐんでいました。
質問：どのようなタイプの人が覆面調査員には向いていますか？
KT：先ほども言ったように、調査員は鋭敏で思いやりがあって共感能力の高い人でなくてはなりません。感情を麻痺させてしまうと、批判的な眼で観察する力がなくなるし、実験手順の残酷さにも無感覚になってしまう恐れがあります。それだと、動物を苦しめている研究施設の従業員たちと同類になってしまいます。
それから、覆面調査員には、独力で物事を考える能力、すばやい行動力、覆面調査のターゲット先に溶け込む能力ももちろん必要だし、PETAの同僚たちと協調して働く能力も必要です。また、他の模範となる労働倫理を持ち、長期間にわたって赴任先に留まることも求められます。秘密事項を厳守し、優れた観察力と文章力を持ち、常識的な頭と探求する心も持たなくてはならないし、物事の全体像を把握して、動物の権利擁護に全力を注がなくてはなりません。
質問：覆面調査員になりたい人にはどんなことを言いたいですか？
KT：自分に能力があると思う人は、PETAにコンタクトを取って、覆面調査員として志願してください。
質問：覆面調査のターゲットはどのようにして絞り込むのですか？
KT：通常は告発者から、施設内での動物の扱いに問題があるという報告が来て、それから私たちが覆面調査を実施し、その証拠を集めます。扱う動物の数に基づいて調査対象を選んで、世界的に有名な大規模企業に所属する研究所の扉の向こうで行われている虐待行為を明るみに出そうとがんばることもあります。
質問：動物虐待を組織だって行っているという点で、最悪の業界はどれですか？
KT：動物を食い物にしている業界はすべてそれなりに最悪だと言わざるを得ません。ただし、研究施設の実験動物に加えられる苦痛は、家畜に行われる露骨な虐待や残虐行為ほどの「多彩さ」はありません。だからといって、狭苦しい不潔な環境で飼われる鶏たち−−嘴を切断され、大量のホルモンを投入されて足が立たなくなるほど体を巨大にさせられ、屠殺場までの輸送中、脱水症状に苦められ、クレートから引っ張り出される時には骨をポキンと折られ、屠殺人によって頭が破裂するまで足で踏みつけられて死ぬ鶏たちに比べて、小さいステンレス製の冷たいケージで10年間も仲間のいない生活を強いられ、人が部屋に入るたびに恐怖と不安にさいなまれ、針で刺されて実験用の物質を注入され、絶望の一生を送る霊長類の苦痛のほうがましだとか、ひどいとか、そういうことを言っているのではありません。業界で利用されているすべての動物たちが苦痛に苛まれているのです。
質問：あなたの下で働いている調査員たちの仕事によって、大きな進展が見られないときにはがっかりしませんか（屠殺場のケースのように）？
KT：動物に関する覆面調査を行っている者なら、調査を行えば研究施設、屠殺場などがすぐに閉鎖されるといった過度な期待を抱かずに、現実的な期待を抱くことが肝心ですし、将来を大きな目で見据えることも必要です。
動物擁護の活動全般に言えることですが、この闘いには長い時間がかかるし、一夜にして大きな変革が起こるとは思っていません。それに、苦しんでいる個々の動物たちにとっては、徐々に起こる変化でも、大きな意味を持つことがあります。その小さい変化のおかげで苦しみが大幅に軽減されることもあるのです。
質問：PETAの会員からのサポートは覆面調査員にとってどのような意味を持ちますか？
KT：ほかの活動家やPETAの会員が静かに応援してくれていることは、覆面調査員にとって大きな励みになります。調査中はしばしば、物理的にも精神的にも深い孤立感に苦しむので、サポーターからの連帯感は非常に大きな意味を持ちます。支援してくださる全ての方に感謝します！
